ミッドナイト・イン・パリ

ミッドナイト・イン・パリ

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早稲田松竹にて 2012年11月17日から11月23日まで上映

2015年で、監督生活50年を迎えたウディ・アレンから届いた42作目の監督作品。
公開された本国アメリカでは、
ウディ・アレンのキャリア史上最高の興行成績を打ち立てたと、大きな話題をふりまいた。

映画は、冒頭から素晴らしい。

映画の舞台であるパリをカジュアルに切り取りながら、
パリの朝から深夜に至る一日の情景をあますところなく描いたオープニングシークエンス。

その手法は、ガーシュインの荘重な「ラプソディー・イン・ブルー」を背景に、
美しく重厚に描かれた白黒映画「マンハッタン」(1979)のオープニングを彷彿とさせながらも、
過去の作品とは、まるで違う感覚を観客に訴えてくる。

それは、監督が、本作では、カジュアルな音楽を選択し、
撮り方すらも軽やかなドキュメンタリータッチにしたことに秘密があるように感じる。
つまり、新しくなっていると感じるのだ。

僕は、この確かな変化を目のあたりにし、
監督が自作の過去作品をしっかり踏まえつつも、
決して安易な懐古趣味や感傷には安住しないという意思を感じ、
ワクワクするような気持でオープニングから魅入ってしまった。

そして、本編がはじめると、オープニングから垣間見えた、
監督の懐古や感傷に対する考え方がより明らかになってくる。

監督自身の分身ともいえる、映画脚本家のギルが主人公と登場するのだ。
その彼が密かに書き続けている小説のテーマが、ずばり「懐古趣味」。

すごい。

ウディアレン監督

ウディ・アレン監督 By: Raffi Asdourian

そこから、ウディ監督は、さらに、掘り下げていく。
感傷や懐古という精神と対決をするべく、ギルを彼が憧れる1920年代のパリの黄金時代へと導いていくのだ。
それは明らかに監督自身がその時代、その世界を生きてみたかったという、イノセントな気分を映し出しているかのようにも見える、だが、監督は、そんな自分自身の欲望や感傷的気分すら客観視して、ギルを通じて、その反証を試みる。

それが素晴らしい。

映画の肝になる部分なので、内容について言及するのは控えるけれど、半世紀のキャリアを重ねた監督が、映画の中で真摯に自分の世界観や感傷的な気分と対決している姿勢をみれることは、それだけで感動的だった。

そんな姿勢をみていると、本物の作家とは、
自分の世界観を”ダイアローグ”で解体し、誰もが共感できる物語におとしこんでいく人
という風に思えてくる。

最後に、本作がこんなにも興行的にも受けた理由は、
ウディ・アレン監督が、過去を望郷することもいいけれど、
今、生きている現在こそが素晴らしいという、
若者たちへのエールで映画を爽やかに締めくくった点も大きいと思う。

そんな生き方をみているだけで、ウディ・アレン監督が、半世紀以上にわたって第一線の監督としてあり続ける理由がわかる気がした。

 

ミッドナイト・イン・パリ

ミッドナイト・イン・パリポスター

■ミッドナイト・イン・パリ Midnight in Paris

<スタッフ&キャスト>
監督:ウディ・アレン
脚本:ウディ・アレン
出演:オーウェン・ウィルソン/レイチェル・マクアダムス/マリオン・コティヤール
公開:日本 2012年5月26日
上映時間:94分

 

 

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安部邦治 (kuniharu abe)
webマガジン『tram』編集長。都電が大好きでNY留学中に制作した映画「Response」は、都電の映画。公益財団 川喜多記念映画文化財団で勤務の後、現在は某ストックフォト会社の海外アーカイブ担当。趣味は囲碁、登山、週末を利用したパワースポット巡り。
安部邦治 (kuniharu abe)

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