おとなのけんか

おとなのけんか

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早稲田松竹にて 2012年7月28日から8月3日まで上映

ポーランドの生んだ巨匠ポランスキー監督の映画。

個人的に、ポランスキー監督は、そのブラッックで自虐的なユーモア感覚が、
ポーランド人というより、つい由緒正しいユダヤ人監督として観てしまう大好きな監督の一人。
そんなファンにとって、今回の『おとなのけんか』は、素晴らしく楽しい映画でした。

まず、映画の舞台が、ポランスキー監督が少女淫行容疑で入国禁止されているアメリカというのがふるっている。
それも、舞台はユダヤ人が多く住むエリアとして有名なNYのブルックリン。
事件の発端の子どもの名がそれぞれザッカリーとイーサン。
NYで暮らした人間なら、ピンとくるような明らかなユダヤ系の名前という目配せが、まず楽しい。

そして、二組の夫婦の職業が、弁護士、金融ブローカー、金物屋、作家という、
ユダヤ人といえば、この仕事というジョークで必ず使われる職業を割り振っているのも楽しい。
おまけに、映画で一番光っていたクリストフ・ヴァルツは、
『イングロリアル・バスターズ』(09年)でユダヤ人を虐待する残忍なナチス将校役から、
今回はユダヤ人役をやらせるという、
ポランスキー監督ならではな、ブラックかつユーモラスな人選も素晴らしい。

そして、現題は”Carnage”。

ポランスキー監督

ポランスキー監督 By: FICG.mx

日本語に翻訳すると、大虐殺とか、修羅場とかいった意味で、
強制収容所を連想される刺激的なタイトルというのも、
ユダヤ人ならではの、自虐的な笑いを感じて、これも楽しい。

ちなみに、映画は、舞台が原作だけに、冒頭とラストシーンの屋外シーンをのぞいで、カメラは劇中、部屋から一歩も外にでない。

そんなこと忘れてしまうほど、その内装が、息をのむほどに素晴らしい。
スタッフロールで、その端正な仕事の名前をさがしたら、美術クレジットにディーン・タボウラリスの名前を発見し、感動してしまった。

この人は、『ゴッドファーザー』のセットデザインでのアカデミー賞。そして、70年80年代に『ランブルフィッシュ』『ペギースーの結婚』そして『地獄の黙示録』での仕事ぶりが忘れられない名美術監督。

今回も、細かいところまで目の行き届いた、目のくらむような名匠の仕事ぶりでした。

ポランスキー監督も、タボウラリスももう80歳近いだろうに、
いよいよ充実した仕事ぶり。すばらしい映画でした。

 

おとなのけんか

おとなのけんかポスター

■おとなのけんか Carnage

<スタッフ&キャスト>
監督:ロマン・ポランスキー
脚本:ロマン・ポランスキー
出演:ジョディ・フォスター/ケイト・ウィンスレット/クリストフ・ヴァルツ/ジョン・C・ライリー
公開:日本 2012年2月18日
上映時間:79分

 

 

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安部邦治 (kuniharu abe)
webマガジン『tram』編集長。都電が大好きでNY留学中に制作した映画「Response」は、都電の映画。公益財団 川喜多記念映画文化財団で勤務の後、現在は某ストックフォト会社の海外アーカイブ担当。趣味は囲碁、登山、週末を利用したパワースポット巡り。
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