アルゴ

アルゴ

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早稲田松竹にて 2013年2月2日から2月8日まで上映

 

史実に基づくCIAの救出作戦を描いた傑作、『アルゴ』をみた。

本作のベン・アフレック監督は、前作『ザ・タウン』から、
ルールを破ってでも守らないといけないものがあると信じる監督独自の世界観を、
雄弁に描くことができる、名監督として片鱗をしめしていた。

そして、本作『アルゴ』を観て、その片鱗は本物に変わったと思う。

僕は、ベン・アフレック監督は、
信じることを守るためには、時にルールを破る必要があると信じていて、
そして、それを見事に撮ることが出来る監督なんだと思う。

まず、今作は実話がベースであるだけに、主人公が超人的な活躍をしない。
主人公が正しいことをしようとすると、それは組織のルールを破る事を意味してしまうからだ。

思いだすと、前作の「ザ・タウン」の主人公は、
友達との絆を守るという信念を貫くため、銀行強盗に深入りしていく話だった。
今回はスケールアップし、国際紛争に踏み込むことになり、
そこで、信念を貫くことになるのだから、ワクワクしてしまう。

そして、この映画でも、前作同様、アフレック監督は、
信念と生き様というテーマと格闘する映画をみせてくれる。

映画には、CIAの人々、ハリウッド関係者、主人公の家族など、
様々な人間が錯綜し、それだけでヒューマンドラマが出来そうな細部にも関わらず、
監督は、信念のため、法律を破ってでも、事件の解決に奔走する主人公の動きや葛藤だけに焦点をしぼってみせる。
余分な色気を大胆にカットし、
映画を一つのテーマに向け、サスペンスフルを描いている手腕は本当に素晴らしい。

ベンアフレック監督

ベンアフレック監督 By: brunop

個人的には、劇中、主人公の救出作戦に無償で協力する映画人を演じた、アラン・アーキンとジョン・グッドマンがあまりにも素晴らしくて、もっとみたいと思った。

この二人が出てきて、「ジョン・ウェインが死んだから、こんな事件が起きるんだ。」など、
皮肉交じりの台詞をみているだけで、70年代末期の映画製作をしている映画人たちの横顔がみえてくるようだった。

この二人が登場する際、ベン監督は数カット、朽ち果てたハリウッドの文字、映画スタジオの給水塔などのロスアンジェルスの風景をはさむ。

それだけで当時の斜陽になりつつあったアメリカ映画の空気が浮かび上がってくるのだから、時代と空気を写し取る手腕は、素晴らしい。

風景、そして脇に魅力的な芸達者の俳優を配することによって、映画の世界感を充実させ、
一つのテーマに向かって物語の舵をとる監督のたしかな手腕は、まさに名監督だと思う。

そして、エンドロールでは、
本作の登場人物たちと、実際に事件に関わった人物たちの姿が並んで写し出されていく。
それらを観ていると、ベン・アフレック監督が、大胆な脱出劇をサスペンスフルに演出している裏側で、
現実に起きた物語であることを強く意識し、
細部のリアルティに徹底的にこだわっていることが伺え、それを知れただけでも感動的だったと思う。

ベン・アフレック監督の今後の活躍がますます楽しみになる作品だった。

 

アルゴポスター

アルゴポスター

■アルゴ Argo

<スタッフ&キャスト>
監督: ベン・アフレック
脚本:クリス・テリオ
出演:ベン・アフレック、ブライアン・クランストン、アラン・アーキン、ジョン・グッドマン、ヴィクター・ガーバー
公開:日本 2012年10月26日
上映時間:120分

 

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安部邦治 (kuniharu abe)
webマガジン『tram』編集長。都電が大好きでNY留学中に制作した映画「Response」は、都電の映画。公益財団 川喜多記念映画文化財団で勤務の後、現在は某ストックフォト会社の海外アーカイブ担当。趣味は囲碁、登山、週末を利用したパワースポット巡り。
安部邦治 (kuniharu abe)

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